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北海道に生まれた民間宇宙開発企業カムイスペースワークス。 略して「CSW」 ブログはこちらに引越しました。
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わからなさの問題(永田)
  以前、わからなさとどう向き合うか?というような内容の記事を書いたことがあります(こちらの後半)。日本人はわからなさと向き合うのが苦手だ、わからない部分が残ったまま判断を迫られるとパニックに陥る、サッカーやラグビーの得点場面で、選手は次々とこのような判断を迫られる。サッカー日本代表の得点力不足には根深いものが有る。というような話です。東京大学の小佐古敏荘先生が、小中学校の屋外活動を制限する限界放射線量を年間20ミリシーベルトとしたことに抗議して辞任されました。現地は動揺しています。小佐古先生の抗議の辞任に対しては称賛の声が多いですが、僕はどうも称賛する気持ちになりません。学者として不誠実な行為だったのではないかと思うのです。

 低線量放射線の体外被曝が健康に与える影響は、よく判っていません。1000 mSv の被曝で生涯がんリスクが5%上昇する。低線量被曝でもこの関係が線形に続くという考え方を Linear No Threshold(LNT)仮説といいます。安全な被曝量は存在しない(No Threshold)、危険性は線形(Linear)にしか減少しない、という考え方です。例えば 10 mSv 被曝すれば、生涯がんリスクは 0.05% 上昇することになります。LNT仮説は一般的に受け入れられている考え方ですが、これを裏付ける臨床データは存在しません。よく判らないけどとりあえずこういう考え方でリスクマネージメントを考えましょうね、という程度のものです(詳細はこちら)。明確な根拠が無いままルール化されたものですので、非常時には弾力的に運用されるべきものです。そのような理由で、国際放射線防護委員会は、3/21に、福島原発震災における放射線防護レベルの緩和に関するコメントを発表しました。その骨子は、緊急時の放射線防護の「参考レベル」を 20 〜 100 mSvとし、また事故収束後の汚染地域からの退去の「参考レベル」を 1〜20 mSv とすることをrecommend(推奨)する、というものでした。

 国際放射線防護委員会の推奨(収束後の参考レベルとして 20 mSv を許容する)を、「非常時は 0.1% の生涯がんリスクの増大を許容せよ」と解釈して大騒ぎしている人がいますが、これは間違いです。LNT仮説には、非常時においても莫大な社会的コストを費やして守らなければならないほどの科学的根拠が無い、というのが正しい理解です。国際放射線防護委員会の推奨はこのような考え方に基づくものです。

 LNT仮説を裏付ける臨床データが得られた例は有りませんが、逆の効果を示すデータが得られた例なら存在します。例えばこちら。原爆の健康効果、というタイトルの論文です。この論文に示されている Fig.1 は衝撃的です。広島、長崎において、100 mGy(大雑把には、1 Sv = 1 Gy なので、= 100 mSv)を下回る低線量被曝が、通常は5%以上発生する出産異常を3%以下にまで低減させたのだそうです。この論文の著者は LNT 仮説のことを LNT ドクマと呼んで批判しています。

学者が知っている知識のレベルを纏めると以下のようになります。
・100 mSv を下回るような低線量体外被曝が健康に悪影響を与えることを示す臨床データは存在しない。
100 mSv を下回るような低線量体外被曝が健康に良い影響を与えることを示す臨床データであれば存在する。
・LNT 仮説はあくまでも仮説である。低線量体外被曝が健康に与える影響については、その影響が良いものか悪いものかですら、よく判っていない。

 このような状況の中で、どこに限界放射線量の線を引くかを決めなければならないわけです。わからないまま何がしかの決定を迫られる、という状況ですので、政治的に決めるしかありません。30万人規模の移住コストを社会が負担してでも避けるべきリスクはどこから?という数字を決めなければいけません。「政治的に」というのをもっと解り易く言うと、より広範な合意が得られる数字に決める、ということです。どうせ学術的根拠は無いのですから、残る問題は、みんなこの数字なら納得できる? というレベルしかありません。この決断に学者が出る幕は無いです。合意が大事である、という意味で、小佐古先生の、「今後どのように放射線量を減らしていくかの方針を合わせて示すことが重要」という提言は理解できます。賛成です。学者として不適切だったなと感じるのは、「この数字は学者として許容できない。これを許容したら学者生命の終わり」という部分です。あたかも政府が学術的真実を捻じ曲げたかのような言い方で、LNT仮説に学術的根拠が有るかのような誤解を与えてしまいました。これは風説です。学者が風説の発信源になるというのは、学者の良心に照らして、誠意ある行動なのでしょうか。

 「政府は安全な数値を早く明確に示して欲しい」という地元の声をよく聞きます。気持ちは理解できますが、これは不可能です。誰も知らないのです。リスクが有ったとしてもあまりに小さすぎてデータが取れないのですから。これまでデータが取れなかったのですから、今後、福島周辺のデータについても、放射線の健康への悪影響を示す臨床データは取れないでしょう。ということは、放射線と健康被害との因果関係が認められることは有り得ないので、放射線による健康被害で政府から損害賠償を勝ち取ることは不可能だろう、と予想されます。更に言うと、がんになるはずだったのに低線量体外被曝のお蔭でがんにならずに済む可能性もあるし、避難することによりこの幸運を逃す可能性もあります。そのくらいの「わからなさ」なのです。

 「わからなさ」と向き合うというのは、難しいことです。否応なく向き合う羽目に陥った当事者の皆様の心労はいかばかりかと思います。でも、これはもう受け入れて向き合うしかありません。自分で判断するしかありません。こう判断して後悔しない、と心を決めるしかありません。国は判断してくれないし、判断してくれたとしても正しいという保証は無いし、その判断が間違っていても賠償してくれません(因果関係が認められないので)。学者ができることは、どこまで判っていて何が判っていないのかを有りのままに示すことだけです。そういう意味で、僕は小佐古先生は不誠実だと思います。
| エンジニアリング | 15:48 | comments(26) | trackbacks(0) | pookmark |
小佐古氏が判断の参考にしたかどうかはわかりませんが、原発作業員が年5mSv浴びて白血病になり、労災認定になった例があるようです。

100mSvで生涯がんリスクが5%上昇するとのことですが、放射線による健康被害はがんだけでしょうか。低線量での健康被害はほとんどないという文脈で、がんリスクの確率を示す研究の話を聞くたびに不安になります。

白血病もがんの一種かもしれませんが、白血病だけに限ればリスクはもっと高くなるのではないでしょうか。
| 外套 | 2011/05/03 7:04 PM |
>小佐古氏が判断の参考にしたかどうかはわかりませんが、原発作業員が年5mSv浴びて白血病になり、労災認定になった例があるようです。

これの件ですね。
http://www.chugoku-np.co.jp/abom/00abom/ningen/000322.html

記事にあるように、この判決は政治判断です。科学的根拠は有りません。彼は原発作業に従事していなくても白血病になっていたかもしれません。真実は誰にも判りません。記事からは、電力会社側が隠蔽を繰り返して心証を悪くしたから敗訴したような印象を受けます。

>白血病もがんの一種かもしれませんが、白血病だけに限ればリスクはもっと高くなるのではないでしょうか。

紹介した論文は逆の結果を示しています(Fig.2 leukemia は白血病という意味です)。690 mGy 被曝すれば、白血病にかかる確率はほぼゼロになるそうです。
| 永田 | 2011/05/03 8:25 PM |
コメントありがとうございました。

労災の白血病認定基準5mSv/年が政治判断によるものであれば、今回もその基準で避難範囲を政治判断すべきではなかったかと思いました。

「紹介した論文」がどれかわかりませんでしたが、690mGy≒690mSvではないでしょうか。私の誤解かもしれませんが。
| 外套 | 2011/05/03 10:12 PM |
>「紹介した論文」がどれかわかりませんでしたが、

失礼しました。下記です。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2592990/pdf/drp-06-0369.pdf

>690mGy≒690mSvではないでしょうか。

大雑把にはそのような換算だそうです。論文中では 69 cGy という表記になっています。

>労災の白血病認定基準5mSv/年が政治判断によるものであれば、今回もその基準で避難範囲を政治判断すべきではなかったかと思いました。

同じ数字で政治的合意が得られるというのは考え難いです。必要なコストが4桁くらい違いますので。「そのくらいのコストなら皆で払ってやろうや」という広範な合意が得られるコストには限度が有ります。「そんなにかかるならもう少し信頼できる根拠を示せや」となるのが人情というものです。
| 永田 | 2011/05/04 7:22 AM |
永田先生

今回の記事は、理解できません。

>政治的に決めるしかありません。

とありますが、それが「国際勧告と国内法で定められている1年1ミリ」なんです。
以前から決められていたものを、政府の都合が悪くなったから、合意にもなしに新たに決めたことが風説になったのではないでしょうか。
*基準値をころころ変えられたら誰でも不信になりますよね^^;

>学者ができることは、どこまで判っていて何が判っていないのかを有りのままに示すことだけです。

学者は抗議してはいけないのですか??
「基準値を守る」という信条をもってはいけないのですか??

「誠実さ」とか「学者とは」というのも人によりけりだと思います。
| Naruse | 2011/05/04 10:42 AM |
>永田様
LNT仮説は一応人では仮説でも他動物実験では線量に比例して突然変異が増えると、そしてその実験でもどういうわけか低線量(ショウジョウバエ50mSv以下、メガマウス375mSv以下)のデータはなく、直線式の外挿値が自然発生と同じくらいだから・・・との感で出たものと習いました。

ショウジョウバエの場合2週間スパンで生殖の周期が回り、線量を浴びたタイミングがすべて影響に加わったから・・とも推測されております。
人の場合そのスパンもまちまちですから、データの取り方からすれべこの点は加味されていないと思います。

確率的影響のなかで発ガンについては永田様おまとめのデータが示されたエビデンスだと思います。

ただ遺伝的影響は原爆被ばく生存者と原子力造船所などの従業員のデータが主ですが、子どもに限局するとそのデータに?をつけざるを得ませんし、今のデータもまだ途中でこれからも注視するとの項目があったはずです。

小佐古先生の話に戻すと安全学者からすればどうなのでしょう?
変に閾(しきい)値とか設定するとそこまではいいんだと勘違い若しくは数値の悪用を許すことになる。
永田様ICRP勧告はPub72(確か・・間違っていたらすいません)の中に上限はあくまで目安でそれ以下にする努力をすることを怠らないと学習しました。

安全学のリスクマネージメントにおいて「ここまで浴びても良いようにしたからやれやれ!」とはいえなかったのではないかと思いますし、我々病院内での放射線リスクの考え方も同調できるものです。

例えそれが放射線ホルミシスを信じていても・・・。
| 虎きち | 2011/05/04 11:31 AM |
ご紹介の論文、タイトルからして、何やらトンデモの匂いが…
| 原爆のベネフィット? | 2011/05/04 12:34 PM |
Naruse さん:

>以前から決められていたものを、政府の都合が悪くなったから、合意にもなしに新たに決めたことが風説になったのではないでしょうか。
>*基準値をころころ変えられたら誰でも不信になりますよね^^;

政治的合意に至る過程が稚拙だったとは思います。この政権がかねてから苦手としている部分ですね。根回しもなくいきなり結論に至る。合意形成に至るプロセスを省くのは民主党の悪い癖です。けれども、「基準値をころころ変える」というのは、おかしなことではありません。状況に応じてころころ変えるべき数字なのです。国際放射線防護委員会は、「合理的に達成できる限り低く保つ(as low as reasonable achievable)」という表現で指標を示しています。これは、非常時においても莫大なコストをかけて守らなければならないと言えるほどの科学的根拠がある数字ではない、というのが理由であるというのは、本文中で説明したとおりです。

>学者は抗議してはいけないのですか??
>「基準値を守る」という信条をもってはいけないのですか??

そんなことはありません。僕はむしろ、学者ももっと政治に介入すべきと主張してきました。今回、小佐古先生は不適切だったと思うのは、学者の立場として反対するという表現を使ったことです。これにより、LNT仮説に学術的根拠が有るかのような誤解を与えてしまいました。結果として、社会的コストを横目に睨みながらわからなさと対峙する、という正しい理解を前提にした健全な議論が阻害されています。これはとても残念なことです。


虎きちさん:

>上限はあくまで目安でそれ以下にする努力をすることを怠らないと学習しました。

僕もそのように理解しています。「as low as reasonable achievable」という表現がその精神を示す言葉だと思います。


原爆のベネフィット? さん

>ご紹介の論文、タイトルからして、何やらトンデモの匂いが…

査読を通過して学術雑誌に掲載されるって、簡単なことではないのですよ。


誤解しないで欲しいのですが、20 mSv/y という数字を受入れるべきだと主張しているのではありません。社会的コストを横目で睨みながら「わからなさ」と対峙し、政治的合意に至らなければいけない問題であり、参考となる学術的知見は無いのですよ、と言いたいのです。皆さんが思っているほど、学者は何でも知っているわけではないのです。

今回の小佐古先生の件により、20 mSv/y という数字はほぼ受け入れ不可となったようですが、小佐古先生が主張する 1 mSv/y も実現不可能だと思います。恐らく、その間の、大規模な移住までは必要とならない適当な値が落としどころとして選ばれるでしょうね。半年とか1年とかの期限を区切って 5〜10 mSv/y まで低減させることを前提に、それまでは 10〜15 mSv/y を指針として採用、という辺りで決着するのかなと予想しています。
| 永田 | 2011/05/04 6:38 PM |
これは主観論になるので今ここで行っている議論とはそぐわないとは思うのですが・・・。

放射線被爆の安全性はきっと悪魔の飽食ではないですが「人を殺さないとわからないこと」なんだと思うんですよ。

だれかに放射線を浴びさせていったいどうなるのか観察しないとわからないことなんだと思うんですよ。
未確認情報ですが、強引に放射性物質を体に埋め込まれてデータを取られたという話もアメリカのほうからも聞きます。
そうしないとわからないことなんだと思うんですよ。

「人を殺さないとわからないこと」は思いっきり安全側で考えればいいのではと思うのですがいかがでしょうか?

だから、小佐古先生や中部大学の武田先生の姿勢のほうが正しいんだろうなあと思うんですが。
| 高橋徹哉 | 2011/05/04 7:42 PM |
>放射線被爆の安全性はきっと悪魔の飽食ではないですが「人を殺さないとわからないこと」なんだと思うんですよ。

違います。低線量体外被曝の影響というのは、広島や長崎で人を殺してもわからなかったことなのです。

思いっきり安全側で考えればいいというのは賛成なのですが、as low as reasonable achievable であるべきだと思います。で、どこが reasonable なのかというのは、政治的に決着するしかないのです。無尽蔵にお金があるわけではないし、被災者の生活再建のためにはいくらお金が有っても足りない状況なのですから。
| 永田 | 2011/05/04 7:54 PM |
永田様

>違います。低線量体外被曝の影響というのは、広島や長崎で人を殺してもわからなかったことなのです

すべての話は低線量の影響はわからなかったではなく「なかった」し、逆に低線量では発がんが「減った」、だからホルミシスだ・・・ではないでしょうか?

>社会的コストを横目で睨みながら「わからなさ」と対峙し

その「わからなさ」の対象が遺伝的可能性を持っている、放射線感受性の高いと言われている6才〜の子供が含まれているところはどうなんでしょう?

20mは上限という考えではなくて20mになったらまた次の手を考えましょうという判断使うための数値だと思うのですが・・・。

ものを造り始めてやっぱり駄目でした・・よりすっぱりあきらめて違う地に行くこと(大変なことと理解をしたうえで)の方がよかったということにもなるかもですし。

今の議論はどちらかといえば科学的根拠中心ですが、実体法的には、そこにいる子供たちはマスクをし、土をいじることを制限され絶えず食べるものも飲むものも気をつけて暮さなければならないで教育を受ける。

小佐古先生がもしここまで考えて安全学的に発言をしたとすればこれは科学者のすることではないのでしょうかね?



| 虎きち | 2011/05/04 8:29 PM |
虎きちさん:

>すべての話は低線量の影響はわからなかったではなく「なかった」し、逆に低線量では発がんが「減った」、だからホルミシスだ・・・ではないでしょうか?

ご指摘の通りですね。有難うございます。「だからホルミシスだ」という結論でOKという合意まではできていないという意味で「わからなかった」と表現しました。

>その「わからなさ」の対象が遺伝的可能性を持っている、放射線感受性の高いと言われている6才〜の子供が含まれているところはどうなんでしょう?

それも含んで「わからない」という状況だと思います。こちらもより正確に言えば、広島と長崎のデータでは、より遺伝的感受性が強いと言われている胎児については、2ポイント以上という有意な差で出産異常の減少が観測され、「ホルミシス効果」が認められた、という状況だろうと思います。

小佐古先生の主張する 1 mSv/y で広範な合意が得られれば、この数字でもOKだと思いますよ。僕は納税者としてそれに必要な増税は喜んで受入れます。社会的コストを横目に睨みながらわからなさと対峙する、という正しい理解を前提とした健全な議論が成り立つ環境さえ確保されていれば、僕としてはOKです。

僕が小佐古先生を批判しているのは、学者の立場として反対するという表現を使った部分です。これにより、LNT仮説に学術的根拠が有るかのような誤解を与えてしまいました。結果として、社会的コストを横目に睨みながらわからなさと対峙する、という正しい理解を前提にした健全な議論が阻害されています。これはとても残念なことです。
| 永田 | 2011/05/04 9:01 PM |
私は土木屋なので「許容応力度法」的な考え方をしてしまいます。

許容応力度法は
終局値/安全率=許容値としてこの許容値の中で仕事をしようという考え方です。

安全率はas low as reasonable achievable のなかで政治的に決まってもいいと思うんです。実際そういうものだし

しかし、終局値がわかっていないという状況という理解でいいと思うのですが、終局値がわかっていないのに許容値を直接決めるような危なさを感じるのです。

だから、わからんことはわからんという提示をすればいいという先生の意見はそのとおりと思うのですが、「いやあ放射線なんてあんぜんなんですよお」なんていうはなしをこれ見よがしにする人たちもいるんでねえ・・・。
終局値はどこにあるのさ
どうすればいいのさという感じがしています。

どうすればいいのかを提示するのが技術者の役割でしょう。
| 高橋徹哉 | 2011/05/04 9:23 PM |
お忙しいところ申し訳ありませんが、少し食いつきます。

>それも含んで「わからない」という状況だと思います。こちらもより正確に言えば、広島と長崎のデータでは、より遺伝的感受性が強いと言われている胎児については、2ポイント以上という有意な差で出産異常の減少が観測され、「ホルミシス効果」が認められた、という状況だろうと思います

確かに外部被ばくだけの問題であればそうでしょうが、小佐古先生が今回みたいなまだ収束していない時点で、内部被ばくに着目していたとしたらどうでしょうか?

多分この20mは外部被ばくに関したものだった・・・


>小佐古先生の主張する 1 mSv/y で広範な合意が得られれば、この数字でもOKだと思いますよ。僕は納税者としてそれに必要な増税は喜んで受入れます。社会的コストを横目に睨みながらわからなさと対峙する、という正しい理解を前提とした健全な議論が成り立つ環境さえ確保されていれば、僕としてはOKです

すごくわかるんですよ・・。
医療でいえば丸山ワクチンが保険適応にならない理由と同じですからね。


| 虎きち | 2011/05/04 10:51 PM |
素人が調べた範囲でのまとめですが、

80年代から低線量被曝が有益とする研究が盛んになり、
「近年、こうしたホルミシス研究の進展に伴って、しきい値なしの直線モデル(LNT)に基づく ICRP勧告値の妥当性についての論争も行われるようになっている」
と、2003年頃LNTが過大評価だとする流れがあった。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-02-01-03
その流れを受けて、2005年に
NASがLNTは過小とも過大ともいえず概ね妥当だとする報告書 BEIR VII を出す。
http://www.nap.edu/catalog.php?record_id=11340 (2006 BEIR VII Phase2)


なのでLNTが学術的に無根拠というわけではなさそうです。


また、ホルミンシスや適応応答のようにLNTが過大評価とする報告書もあれば、
LNTが軽視している内部被曝の重要性を強調し
LNTモデルは過小評価だとする報告書ECRRもあります。
http://www.euradcom.org/2011/ecrr2010.pdf

日本では、ラドン温泉や、原爆の被害から立ち直った経緯、原発もあるという事情から、100mSv以下は影響がない(LNTモデルは過大評価)と答える研究者が多いのかもしれません。



ただ、放射線の影響は癌だけではなく、就職するとき、結婚するとき、福島の子供は癌になるとか子供に影響が出ると言った差別を受けるリスクも含むのです。
また、将来その差別や癌で苦しむ子供が出たとき、やはり補償の問題になるかもしれません。
その際やはり「被爆者利権だ」などと言われ適切な救済がされない恐れもあります。


放射線のリスクを評価するのは難しいのはわかりますが、
これから進学、就職、結婚、出産と長い人生を歩んでいく子供達にはより安全側に立った対応が必須だと思うのです。


救う規模が大きすぎて見捨てるというのなら、「影響がない」などと嘯くのではなく、きちんと、子供に「ほかにすくうものがあるから、きみのしょうらいをぎせいにします」と言ってあげる事です。
そうしたら、自主避難を迷っている親たちも動き出すかもしれません。


今は「影響がない」を信じている人も多く、防護策を取る側が希有な存在として扱われています。
| 一般人 | 2011/05/05 2:41 AM |
必要なのは、線量を下げる対策。 対策があれば、一時的に20相当も正当化されるが、無策なら半分でも正当化されない。 これがICRP111に書かれている精神だと思うのですが。 100でも良いと言い出したら、国際的にイランや北朝鮮と同じで、世界を敵にしてしまい、日本製のボイコットが起きるのではないでしょうか?
 
 
| heibay | 2011/05/05 5:42 AM |
>一般人様

ありがとうございます。
>日本では、ラドン温泉や、原爆の被害から立ち直った経緯、原発もあるという事情から、100mSv以下は影響がない(LNTモデルは過大評価)と答える研究者が多いのかもしれません

残念ながらラドンはエネルギーは高いですがアルファ線のため透過度が低く、しかも生物学的半減期・物理学的半減期を加味した実効半減期が短く体に影響を与えませんのでここの議論には関係はありません。

また原爆は外部被ばくで、その加味するはずの内部被ばくも吹きあがった上昇気流で飛散したため爆心から数十キロの範囲でFalloutは少なかった(周囲を詳しくはモニタリングされていない)と報告があります。

100mの数値はわかりやすくまとめられたものを提示します
http://www.iips.co.jp/rah/spotlight/kassei/humans.html

ここに載っているすべてが20m以下の線量では逆にすべてのリスクが対照群よりも少ないので余計なコストを下げるべき・・・ということだと・・・。

小佐古先生が「この数字は学者として許容できない。これを許容したら学者生命の終わり」と言ったエビデンスが示されていないので、我々の今持っているエビデンスとしては低線量ホルミシスはあってもLNT仮説は低線量で適応はないだろうと、逆にこの曖昧さでコストがかかるとこっちの方が国民の負担として増加するので学者として不誠実・・・。

>「ほかにすくうものがあるから、きみのしょうらいをぎせいにします」

これは将来を犠牲にする可能性を学術的に示唆できていないので当てはまらない・・・そんな議論の内容だと思います。
| 虎きち | 2011/05/05 12:44 PM |
皆様、熱心な議論有難うございます。嬉しいです。

高橋さん:

>しかし、終局値がわかっていないという状況という理解でいいと思うのですが、終局値がわかっていないのに許容値を直接決めるような危なさを感じるのです。

その通りだと思います。終局値(Threshold)が存在するのかどうかが議論の対象になっている状況ですので。わからなさの問題というのは、そういうことです。


虎きちさん:

>小佐古先生が今回みたいなまだ収束していない時点で、内部被ばくに着目していたとしたらどうでしょうか?

一般人さんも指摘されていますが、内部被爆については低線量レベルでもより慎重な対応が必要だと思います。ただし、小佐古先生の抗議がこれを心配したもの、とは僕には思えません。彼は3月に、飲料水や牛乳の規制値を1桁引き上げるよう提言されているらしいですからね。内部被爆に対しては甘い考え方をする人ではないかなと思うのです。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110502k0000m010108000c.html


一般人さん、大変詳細なコメント有難うございました。勉強になります。BEIR VII は膨大な頁数ですので追い切れていませんが、LNT仮説を妥当とした根拠には内部被爆の効果や細胞レベルの実験データが入っているように思います。ご指摘のように、内部被爆については低線量レベルでもより慎重な対応が必要だと思います。子供たちへの風評被害については、それを防ぐことこそが学者の仕事だと思います。「子供達にはより安全側に立った対応が必須」というご意見には賛成です。


heibay さん:

>必要なのは、線量を下げる対策。 対策があれば、一時的に20相当も正当化されるが、無策なら半分でも正当化されない。

僕もそう思います。本文中にもそのように記述しています。小佐古先生の、「今後どのように放射線量を減らしていくかの方針を合わせて示すことが重要」という提言は理解できます。賛成です。


虎きちさん:

僕が小佐古先生は不誠実だと主張している根拠は、あたかも政府が学術的真実を捻じ曲げたかのような言い方で抗議している部分です。それではその捻じ曲げられた学術的真実なるものを提示して欲しいです。

低線量放射線による外部被曝の影響は、有るかもしれないし、無いかもしれません。そこであるべき対策は以下のようなものだろうと思います。

・as low as reasonable achievable を目指す。
・どこが reasonable なのかは、政治的に決める。
・線量低減の努力も平行して継続する。
・無尽蔵にお金があるわけではない(← これが一番重要)

無尽蔵にお金が有れば、こんな議論は不要なのです。でも僕は、限られた原資と限られた情報の中で如何に後悔しない結論を得るかという議論は、物凄く健全だと思っています。
| 永田 | 2011/05/05 4:39 PM |
科学的であり、誠実で勇気ある記事だと思いました。
とても説得力ある論旨だと思います。
ありがとうございます。
| きゃさりん | 2011/05/06 10:57 AM |
きゃさりんさん、有難うございます。恐縮です。
| 永田 | 2011/05/06 12:57 PM |
終局値さえわからないというのはどうなのかなあという気がしています。
すごい抵抗があります。

技術屋は終局値があって安全率があって制限値があって、その制限値をきちんと守ることで安全を担保できるわけですし、それをきちんと守ることが仕事の誠実さの裏づけにもなってきているのにそれがないって状態は怖いです。

でふと思ったのですが
大昔、建物ってどうしていたんだろうと思うんですよ。
今だったらきちんと構造計算をしてそれを裏づけに大丈夫でしょっていえるけど、昔はそんなものはない「大丈夫ですよ」という言葉は職人の経験しかない。科学的裏づけが状態での話です。
だからこそだと思うんだけど大火事なんかで「家はなくなるものだ」ということが前提で生活設計が成り立っていた。

さて、今回の場合は?
職人を原子力の学者さんと考えてその人たちの言葉をどう信じるか???
それを前提に生活設計をする????

うーん??
いいのそんなことで????
| 高橋徹哉 | 2011/05/07 9:52 PM |
私もこの分野は素人ですが、どうも引用している論文の扱いは慎重になったほうが良いと思います。
下記のURLではこのラッキー博士の論文の問題点について述べています。

http://gegen.sblo.jp/article/44525822.html

LNT仮説を否定するためにホルミシス効果を強調している点、原点となる論文の扱いや自身の論文を引用しながら博士本人による独自の研究が行われていない点、を鑑みると参考とするのは不適切かと存じます。

また、個人的には、「LNTが当然であるように学校やメディアで広まっているが…」云々の書き方が非常に学者らしくない、と感じます。事実を述べるなら、研究成果だけを書き、こういうことを書く必要はないはずなので。

ぶしつけではありますが、ブログ主様には一度、本件に関してはご再考願えればと思います。
| Saizwong | 2011/10/26 11:22 PM |
Saizwong さん、コメント有難うございました。コメントに気付くのが大変遅くなりました。本文を読んで頂ければ判るように、僕の認識は「LNT仮説の真偽はよく判らない」です。リンク先も拝見しましたが、再考の必要を感じませんでした。
| 永田 | 2012/01/26 7:15 AM |
 診療放射線技師をしていました。
 素晴らしいまとめですね。コメントを含め、完全に同意します。ブログを読むと、放射線関係の専門家とは思われませんが、ここまで正確にまとめていただいて本当に感謝します。
 医療被爆はこのような考え方の対象外とされていますが、患者さんの不安は同じです。検査するメリット、しないデメリットという考え方で説明していましたが、なかなか理解して頂けません。病院側に放射線検査をする経済的なメリットがあるという背景もあり難しいところです。「私だったら積極的に検査してもらいます」という説明が一番納得?してもらえたかな。
 ガンマカメラという放射線を画像化する機械があります。検査用の放射性物質がない状態でも、雨が降るようにピカピカ光り、あっという間に画面が真っ白になります。生まれてこのかた、一瞬の休む間もなく、私たちの体をこのような放射線が常時突き抜けていることがわかります。放射線は目に見えませんし感じることもできません。なめてはいけませんが、過度に恐れることはありません。
 とんでもないことを大学教授の肩書きで発言される方がおられ、それが事態を混乱させていることに心を痛めています。この内容を、多くの方に知ってほしいと思います。
 蛇足ですが、内部被曝は生物学的半減期を考慮した預託実効線量という考え方で取り扱い、外部被曝と区分する必要はありません。ちなみに、私が仕事を始めた40年ほど前は、甲状腺機能検査ではI-131を子供で1カプセル=250マイクロキューリ=9,250,000ベクレル、成人は2カプセル投与していました。ICRP Publication 72によれば年齢によりますが、15歳〜成人で約300〜400ミリシーベルトの被爆のようですね。細かなことを言えば、ヨード制限食を一定期間実施して投与しますので、もっと高い線量になります。今論議されている基準と比べると桁が違いますね。ただし、今はこの検査はやっていないと思います。
| ken1203 | 2012/09/06 9:26 PM |
複雑系物理学によく出てくるキーワードに「カオスの縁」とか「threshold」とか「自己組織臨界」とかある訳で、放射線を被爆する事によってどのような傷付き方をdnaが蒙るのか?当然ランダムな傷付き方をするのだろうが、ランダムに傷付き、また、修復出来る出来ないに関しても全くカオスな訳で、複数の病が存在していて、複数のthresholdが混在しているだろうとは思う。

こういう事は複雑系物理学の知識を基礎にして解析する事が正攻法だろうと思う。

トータルしてlinearに見える事象は、実は、複数の「threshold」が混在した事象なのかも知れない。

歴代はべき乗則で動く。
| 山口健二 | 2012/09/10 4:31 PM |
こんばんわ
昨日、講演会をしていただきありがとうございました
「夢」そして仲間についての話はとても面白く、感動的でした
僕も夢があります
その夢に向かって植松さんの話を大事にして頑張って行きたいと思います
本当に素晴らしい講演会をしていだだきありがとうございました
| 野球少年 | 2012/12/19 8:49 PM |









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