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CSWブログ

北海道に生まれた民間宇宙開発企業カムイスペースワークス。 略して「CSW」 ブログはこちらに引越しました。
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ヤバい経済学(永田)
   4年ほど前にベストセラーになった「ヤバい経済学」という本が有ります。遅れ馳せながら今年の正月に読んだのですが、期待以上の面白さでした。「経済学」という学問に対する印象が変わりました。複雑に相関する社会の事象から、統計学の手法を駆使して因果関係を探り当てる、という内容なのですが、本当は社会学の研究者がやらなきゃいけない仕事なんじゃないかと思います。結論を決めた後、その結論に至る根拠を探し出して好都合な論旨を仕立て上げるという手法がまかり通ってる業界の方々には無理でしょうけど。

 主役となる経済学者はシカゴ大学のスティーブン・レビット。彼の研究を判りやすく噛み砕いて本に纏め上げるのがスティーブン・ダブナー。両者の共著ということになっています。この経済学者が最初に注目を集めたのは、1990年代に全米で犯罪率が激減した理由を解明した論文でした。当時は、ニューヨークのジュリアーニ市長の指揮の元、「割れ窓理論」が成功した、という認識が一般的でした。しかし、データを詳細に調べてみると、ニューヨークで犯罪率が劇的に下がり始めたのは1990年(1993年時点で既に20%減少)、割れ窓理論の実践が始まったのは1994年。実は両者には因果関係が無いのだそうです。その他のデータを全て洗った結果、スティーブンは今まで誰も指摘しなかった要因を突き止めます。1970年代に中絶が合法化されたのが、1990年代に犯罪率が激減した原因だというのです。この論文の論旨は精緻なもので、中絶の合法化と犯罪率の激減は相関関係ではなく因果関係であるという論証まで行われました。1970年代、全米で一斉に中絶が合法化されたわけではなく、州によって数年のずれが有ります。犯罪率の州ごとのデータを調べると、中絶が合法化した年と犯罪率が急減を始める年との間に、強い相関が有るのだそうです。また、各州での中絶率と犯罪減少率との間にも強い相関が有ることが示されました。

 彼の論文は純粋に学術的なものでしたが、社会から強い批判を浴びました。中絶推進論者のレッテルを貼られたのだそうです。研究者として真摯に数字に向き合い、精緻な論考の末に辿り着いた結論の背景には政治的主張は無かっただろうと思います。むしろ、この本の中では、米国で毎年150万件実施される中絶(150万の胎児の命)が、米国で毎年殺される1万人の命(を救うために犯罪率を低下させること)に見合うだろうか?という疑問が投げ掛けられています。学術的論考とモラルとは分けて考えなければいけないという好例だと思います。

 さて、ここまでの話はイントロです。最も印象深かった論考は、子供の教育に関する分析でした。子供の成績を上げるためにはどんな子育てが有効かを、経済学の手法から明らかにする、というものです。分析の手法は同じです。子供の事情と、その子の成績に関するデータを数多く集め、統計学の手法を駆使して因果関係の大小を調べるのです。因果関係が強い事情は、成績を上げるのに有効なので、わが子に提供すべき、ということになります。16個の事情に関して相関が調べられ、以下のような結果が得られました。

意味アリ: 親の教育水準が高い。
意味ナシ: 家族関係が保たれている。

意味アリ:親の社会的・経済的地位が高い。
意味ナシ:最近よりよい界隈に引っ越した。

意味アリ: 母親は30歳以上で最初の子供を産んだ。
意味ナシ: その子が生まれてから幼稚園に入園するまで母親は仕事に就かなかった。

意味アリ: 家に本がたくさんある。
意味ナシ: ほとんど毎日親が本を読んでくれる。

意味アリ: 親は家で英語を話す(米国での研究なので、移民ではないという意味)。
意味ナシ: 親はその子をよく美術館に連れて行く。

他にも有るのですが、個別の事例よりも、それを一般化した解釈のほうが大事ですので、残りは省略します。上記を一般化すると、要するにこういうことです。相関が強いのは、「親がどんな人か」という事情ばかりです。相関が無いのは、「親が何をしてあげるか」という事情ばかりです。つまり、子育てで大事なのは、子供に何をしてあげるか、ではなく、自分(親)はどんな人か、なのだそうです。これはモラルの話ではなく、学術的論考から得られた結論です。

さて、この話を読んだ親がどう思うかで、その後の我が子の人生が分かれます。「何をしてあげても意味無いんだわ。親なりの子にしかならないんだわ」 と思っては駄目です。「子供を変えたければ、自分(親)を変えればいいってことじゃないの。子供にガミガミ押し付けなくていいなんて、有り難いわ。他人を変えるのは至難の業だけど、自分を変えるなら簡単だわ」 と思う親を持つ子は幸せです。我が子に夢を持って欲しければ、自分が持てばいいのです。勉強して欲しければ、自分がすればいいのです。

デフレの次」という記事の中で、最後にこう書きました。インフレ経済下では売り手有利ですから、売り手に回る努力をすれば報われます。作ってあげる側、してあげる側に回る。これがインフレ経済を生き抜くための鉄則です。してあげられないまでも、できるだけしてもらわずに済ませる。そのためには能力が必要です。

平均で、中学生の学習塾に年間で25万円かかるそうです。してあげられないまでも、できるだけしてもらわずに済ませる。自分で教えてはどうでしょうか。数学だけで結構です。他の科目も数学に引っ張られて上がりますから。急には無理でも、例えば我が子が小学生であれば、中学の数学をマスターするのに数年の猶予が有ります。数年かけても中学の数学がマスターできない人は、ごく不通に社会生活を送れている人であれば、いないと思います。開成高校に受かるのを目指すくらいの勢いで、本気で勉強するのです。子供が二人いれば150万円儲かる計算になります。親が勉強すれば子供も負けじと勉強するので(母親に数学で勝てないなんて普通の子なら許容できないです)、教える必要もなくなるかもしれません。

具体的な勉強の仕方については、以前に「知的訓練」というエントリで書きましたので、再掲します。各学年で5冊、3年分で15冊程度の問題集を解き潰せば、中学の数学をマスターできると思います。


| 社会一般 | 23:28 | comments(6) | trackbacks(0) | pookmark |
行きつけのメイドカフェに行きますと
たまーに「この数学の問題分かります??」とか言ってくる子がいまして、たまーに相手してやるのですが、結構難しいんですが何とか教えています。
というか、結構勉強になっています。「へーこうやってやるんだあ!」とその子の隣で感心しています。

そして家でも技術士の勉強です。

うちはですからとてもいい環境だといえるでしょう
・・・・独身ですが・・・
| 高橋徹哉 | 2010/05/02 8:43 PM |
永田先生の
「勉強好きな子に育てるには、まず親が勉強好きになること」
という提案は、まさに発想の逆転。
参考になりました。

数学は苦手だった私ですが、
永田先生の書かれた勉強法を試してみて
自分自身、中学生の数学をマスターできるか、
また、我が子にも親が学んでる姿を見せられるか
試してみたいと思います。
| yuske | 2010/05/04 11:00 AM |
ひとつきになることがあります

大人になるとなんで勉強しなくなるんだろうかと思います

技術士の勉強でも(というより仕事にかかわる資格なのに)
「おら勉強できないし、やる気ないし」と完全にやらなくなります。

確かに昔よりは物覚えが悪くなるのは仕方ないのですが、本くらいは読めよなあと思いますよ。

ひどい人になるとその本さえ買おうとせずに人からもらおうとする輩もいます。模範解答を作れといってくる人間もいます。作ってやっているあいだその本人は酒を飲んで酔っ払って電話をかけてきます。もっとひどいのは国土交通白書をダウンロードするのがめんどくさいからお前のダウンロードしたやつをよこせとか言ってくる人間もいます。

何でまたこうなるかなあと不思議で仕方がありません。
| 高橋徹哉 | 2010/05/04 9:06 PM |
yuskeさん、試してみてどうだったか、いずれ教えてください。うちはまだ0歳児なので、実践は十数年後になります。

>大人になるとなんで勉強しなくなるんだろうかと思います

子供の頃の勉強がよほど辛かったのでしょうか。生きたい、知りたい、繋がりたいというのは、脳細胞の基本的欲求の筈なんですけどね。

独身なんですか。その環境、勿体無いですね。
| | 2010/05/05 5:31 PM |
もうひとつ
怖いなあと思うのは
勉強をしない理由を家族に求めることなんです
家族の相手をしてやらなきゃならないとかね
お前独身だから時間があるだろうとかね

これが怖いと思いますよ
| 高橋徹哉 | 2010/05/05 6:17 PM |
どうもです。結局飲みのお誘いを適切に出せていません。すみません。とりあえず5月25,26で北海道入りしますので、また週明けにでもメールしますね。

> 複雑に相関する社会の事象から、統計学の手法を駆使して因果関係を探り当てる、という内容なのですが、本当は社会学の研究者がやらなきゃいけない仕事なんじゃないかと思います。

はいはい、只今、数案件チャレンジ中です。でも、僕がやると金になることから始めてしまうので、結果が論文化されるより特許化の話が先行してしまうというのが、いかがなものかなとひそかに悩んでいます。

>我が子に夢を持って欲しければ、自分が持てばいいのです。勉強して欲しければ、自分がすればいいのです。

そりゃ当り前ですって、真摯な調査に直感で答えてはいけませんね。それでも、自分自身は自分の親もそうだったように、勉強はする親ではある事を心がけています。ただ、夢は分かりやすく持っていないので、夢を持っている大人に可能な限り合わせて代用しています(^^;
| ふなはし | 2010/05/16 7:37 PM |









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